What's Going On / Marvin Gaye

ホワッツ・ゴーイング・オン(愛のゆくえ) / マーヴィン・ゲイ


 こんにちは、Ellieです。札幌のソウルバーMAYBEの充さんの5回目の月命日です。今回は主人のリクエストを受けまして、 Marvin Gaye(マーヴィン・ゲイ) の What’s Going On (ホワッツ・ゴーイング・オン)を選びました。

 

 私が充さんとMAYBEに出会えたのは、昔同じく札幌でソウルバー・フィンガーポップを経営していた主人の縁でした。主人はフィンガー・ポップを数年で閉めたものの充さんとの親交は続いていて、十数年前に主人が私をMAYBEに連れて行ってくれたことで私は充さんと出会い、ソウルを好きになりました。充さんが親しみを込めて主人を「お兄ちゃん」と呼ぶのを聞くのがとても好きでした。

 

 MAYBEで充さんがレコードをかける時には、いつもさり気なく主人の大好きな What’s Going On をかけてくれました。乾杯の時の「お帰り」と同じくらい、温かいメッセージでした。

 

 ねえ、充さん。このサイトを始めてから今まで見てこなかったソウルの色々な面が見えて楽しくて。こんな話をMAYBEのカウンターでしたかったなって思うことが増えてるよ。でも充さんがいなくならなかったらこのサイトも生まれてなかったから、人生ってうまくいかないものだねって主人と2人で笑ってる。それでも、充さんもどこかでこれを見て「へぇ」って笑ってくれていたら嬉しいな。

 

 

"What's Going On"の解釈


 今回は歌詞と和訳の紹介の前に、解説を入れたいと思います。これを読まずにいきなり歌詞と和訳に進むと、「え?」となる可能性大ですので、少し長くなりますがどうぞお付き合いください。

 

 先日この曲についてリサーチをしていた時に、ある歌詞紹介サイト(英語)に出会いました。Genius Lyricsというサイトで、ここではユーザーが曲の歌詞にその曲の背景やアーティストのこと、歴史的背景などについて注釈をつけることができます。このサイトのWhat’s Going Onのページで、興味深い解釈を目にしました。

 

When you initially hear Gaye sing the words “What’s going on” you could perceive it as being a question. But the text on the album cover and the song title don’t contain question marks.

 

These final lines confirm that Gaye isn’t asking what’s going on. He’s telling us about all the troubling things that are going on in the world in the early ‘70s.

 

最初に”What’s going on”という言葉をゲイが歌っているのを聞くと、これを疑問・質問と捉えるかもしれません。しかしながらアルバムカバーのテキストや曲のタイトルに疑問符(クエスチョンマーク)はついていません。

 

最後の2行(” Tell me what's going on, I'll tell you what's going on”)から読み取れるように、ゲイは何が起きているのかを問うてはいません。彼は70年代初期に世界で「起きていた」様々な問題を私たちに語っているのです。

 

 “what”という疑問詞を使っているのになぜ疑問形にならないのかと不思議に思う方もいると思いますので、ここで文法の解説を。

 

 “what”は確かに疑問詞ですが、それ以外にも関係詞として使われる場合があります。分かり易いように例を用意しました。

 

What are you asking?

あなたは何を質問しているの?

 

That is not what I’m asking.

それは私が質問していることではありません。

意訳:そんなことは質問していない!

 

前者は疑問詞としての使い方で、「何を/何が」という意味で使われています。後者はその言葉の後ろに説明が加わる形の関係詞としての使い方で、「こと/もの」として使われています。

 

 前出の注釈をつけた方は、What’s Going Onの”what”は後者の関係詞として使われていて、この曲の歌詞は「何が起きてるんだ」と疑問を投げかける形ではなく、「今起きていること」を世に伝える形で書かれていると解釈しているのです。注釈の文中で取り上げている最後の2行は確かに関係詞として使っている箇所なので、それを全体に適用しても十分自然な内容になります。また英語の疑問文は最後に疑問符がつくことがルールなので、「疑問符がついていないから用法は疑問詞ではなく関係詞」という解釈ももっともです。

 

 これを読むまで私もWhat’s Going Onは疑問形だと思っていました。しかしこの解釈をもとに歌詞を考察してみると、個人的にはこの注釈の通り”what”を疑問詞ではなく関係詞として扱う方がしっくりきます。

 

 この曲はベトナム戦争の反戦歌としても有名です。「何が起きてる?」よりも、「こんなことが起きてるぞ」と世に訴えかけているという解釈の方がメッセージの重みが増します。

 

 以上の理由から、私の和訳も”what”を関係詞として捉えてつけました。Ellie流の解釈と和訳を楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

 

 

What's Going On / Marvin Gaye (1971)


Mother, mother

母親たちよ

There's too many of you crying

途方もない数の母親たちが泣いている

Brother, brother, brother

兄弟たちよ

There's far too many of you dying

途方もない数の兄弟たちが死んでいる

“mother”も”brother”も複数形にはなっていませんが、

それぞれに続く歌詞の中では”many of you”と不特定多数に呼びかける形で複数形になっています

ここで使われている"you(複数)"はその前の呼びかけを受けての代名詞(置換え)なので、

"mother/brother"="you(複数)"となります

またこの後に続く”father”との対比のためにも複数形で訳しています

You know we've got to find a way

なあ、僕らは方法を見つけなきゃいけない

To bring some loving here today, yeah

今ここに愛をもたらす方法を

 

Father, father

父よ

We don't need to escalate

僕らが激化する必要はない

You see, war is not the answer

分かるだろう、争いは答えじゃない

For only love can conquer hate

愛だけが憎しみに打ち勝つことができるんだ

 前出の”mother”と”brother”とは異なり、”father”は単数扱いで、

特定の父親、つまりマービン・ゲイ氏本人の父親に呼びかけていると考えられます

2行目の”We(僕ら)”は本人と、確執のあった父親を表していると解釈できます

マービン・ゲイ氏が口論の末に父親に射殺されたというのは有名な話で、

この「激化する必要はない」からこの頃すでにその兆候があったことが読み取れます 

You know we've got to find a way

なあ、僕らは方法を見つけなきゃいけない

To bring some loving here today

今ここに愛をもたらす方法を

 

Picket lines and picket signs

監視線とプラカード

Don't punish me with brutality

残忍なやり方で僕を罰しないでくれ

Talk to me, so you can see what's going on

話してくれ、そうすればわかるさ、今起きていることが

What's going on

今起きていること

Yeah, what's going on

今起きていること

Ah, what's going on

今起きていること 

“now”という言葉はついていないのに「今」と入れている理由は、

これが”is going(=be動詞+一般動詞の原形)”で「現在進行形(今起きていること)」になっているためです 

 

In the mean time

とにもかくにも

Right on, baby

その通りさ

Right on, right on

その通り、その通り

 

Mother, mother everybody thinks we're wrong

母よ、みんな僕らが間違っていると思ってる

Oh, but who are they to judge us

でも僕らを批判している奴らは何者なんだ

Simply because our hair is long

僕らの髪が長いってだけでさ

「髪が長いだけで批判される」は当時戦争反対を掲げて活動していたヒッピーの描写

Oh, you know we've got to find a way

なあ、僕らは方法を見つけなきゃならない

To bring some understanding here today, oh

今ここで理解し合う方法を

 

Picket lines and picket signs

監視線とプラカード

Don't punish me with brutality

残忍なやり方で僕を罰しないで

Come on, talk to me

さあ話してよ

So you can see what's going on

そうすればわかるから、今起きていることが

Yeah, what's going on

今起きていること

Tell me what's going on

今起きていることを話してよ

I'll tell you what's going on – Whoo

僕は今起きていることを話すよ

Right on baby, right on baby

その通り、その通りだ

 

 

Ellieからひとこと


 この曲に限らずすべての曲で、私の解説や解釈が違うと思う方もいらっしゃるでしょう。しかしながら「明らかに言葉の意味が違う」というもの以外は、どんな解釈も正しいと私は思っています。

 

 例えば聖書だって、同じ本を多くの人が読んでそれぞれに異なる解釈をしているために、同じキリスト教の中にたくさんの宗派があるわけです。これだけ古くからあって多くの人が読んでいる本にそれだけたくさんの解釈があるのですから、たった数分間の音楽と抽象的に書かれた歌詞の解釈が聞く人の数あっても不思議ではありません。

 

「こんな解釈もあるんだ」

「こんな聞き方もあるんだ」

 

これからも、そんな風に感じながら読んで貰えたら嬉しいです。

 

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