いつわり(ヒーズ・ミストラ・ノゥ・イット・オール)
/ スティービー・ワンダー
こんにちは、エリーです。2022年9月9日。今日は札幌のソウルバーMAYBEの充さんの3回目の命日。大好きなあの人がいなくなって、今日で3年になります。
充さんのことを思わずにはいられない命日という特別な日に選んだのは、Stevie Wonder(スティービー・ワンダー) の "He’s Misstra Know-It-All(邦題は「いつわり」)" です。
この曲について調べてみたところ、スティービー・ワンダー氏は明確なことは言っていないものの、この曲はリチャード・ニクソン元米国大統領のウォーターゲート事件を揶揄した曲のようです。ウォーターゲート事件の発覚が1972年、この曲の発表が1974年というタイミングを考えても間違いはないでしょう。スティービー・ワンダー氏は元々社会問題や政治問題をテーマにした曲が目立つアーティストですし、改めて歌詞を見てみるとあちこちに皮肉がちりばめられていて、なるほどなという感じがします。
こんな訳ありソングを充さんの命日に選んだ理由は、きっつい皮肉がちりばめられていながらも、この曲の中で描写されている「すべてを知る男」はとてもカッコいい男で、そのイメージが充さんと重なったからです。
札幌に引っ越してきてから、色々な人の口から充さんの話を聞きました。誰もがそれぞれに自分の充さん像を持っていて、そのどれもが充さんだったのだと考えた時に、「交友関係が広くて、色んなことを知っていて、悪くて、頭がきれて、口がうまくて、でも最高にカッコよくて、憎めない男」というこの曲が思い浮かんだのです。(この曲で描かれている「すべてを知る男」は愛されキャラではありませんが。)
ねえ、充さん。この曲の中で「奴」は否定しているけどさ、充さんは生き急ぎすぎたと思うんだ。今だって私だけじゃなくて、本当にたくさんの人が充さんを恋しがっているんだよ?わかってる?年に一回、この日くらい、会えないかなぁ。懐かしい写真を見つけたから載せちゃう。私たちの「指定席」って言ってくれたカウンターの右奥。大好きだったお店の風景。写真に残しておいて良かった。充さんにもMAYBEにも、やっぱり会いたい。もう聞き飽きたかもしれないけど、大好きだよ。
He's Misstra Know-it-all / Stevie Wonder
タイトルの Misstra は Mr. と同義。
正式なスペルは "mister" ですが、発音になまりやクセのある場合などには "misstra" のように音をより正確に表現したスペルを使う場合もあります。
"Know-it-all" のようにハイフンで単語をつなぐことで、「すべてを知っている」という風に形容詞のような使い方をする手法を使っています。
曲の主人公を「すべてを知る男」と表現しているのは、
ニクソン元大統領こそがウォーターゲート事件の真相を知っているということと、
あらゆる情報にアクセスできるアメリカの大統領の権限の大きさの両方を示唆してのことだと解釈できます。
He's a man with a plan
奴は企みを抱く男
Got a counterfeit dollar in his hand
手には偽札を握り
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
Playing hard, talking fast
ハードにプレイして、早口で話す
Making sure that he won't be the last
決して最後のひとりにならないように
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
Makes a deal with a smile
笑顔で駆け引きをする
Knowing all the time that his lie's a mile
いつも自分の嘘はとびきりだと確信を持っている
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
Must be seen, there's no doubt
目立ちたがり屋で、疑う余地もないのは
He's the coolest one with the biggest mouth
奴が最高にカッコよくて一番のホラ吹きだってこと
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
When you tell him he's living fast
奴に「生き急ぎすぎだ」と言えば
He will say, "What do you know?
奴は言うだろう、「お前に何が分かる?
If you had my kind of cash
俺くらいの金を持っているとな
You'd have more than one place to go"
目的地はひとつじゃないんだよ」
“place to go” は「行くべき場所」という意味
Any place, he will play
どんな場所でも、奴はプレイする
His only concern is how much you'll pay
奴の唯一の関心はお前がいくら払うかだ
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
If he shakes on a bet
賭けで手を打ったら
“shake on ...” で「...に合意する、手を打つ」という意味
合意の証として握手(shake hands)するという意味です
He's the kind of dude that won't pay his debt
自分の負けは払わないタイプの奴だ
Oh, He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
When you say that he's living wrong
奴に「生き方を間違っている」と言えば
He'll tell you he knows he's living right
奴は確信をもって正しく生きていると言うだろう
And you'd be a stronger man
そしてお前は強くなれる
If you took Misstra Know-It-All's advice, oh oh
すべてを知る男の助言に従えば
He's the man with a plan
奴は企みを抱く男
Got a counterfeit dollar in his hand
手には偽札を握り
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
Take my word, please beware
よく聞け、気をつけろ
Of a man that just don't give a care, no
何も気にかけない男にはな
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
(Look out, he's coming!)
(見ろ、奴が来るぞ!)
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
Can his mind take the pain?
奴の心は痛みに耐えられるのか?
Take your hat off to the man
帽子をとって敬意を表そう
歌詞には「帽子を脱いで」としか書いていませんが、
この行為は「敬意を表する」という意味で使われます
Who's got the plan, yeah, yeah
企みを抱くあの男に
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
ここで「敬意を表せ」という表現になるのは、
疑惑があろうとなかろうと彼が大統領であることは事実であり、
アメリカの人たちの中には好き嫌いにかかわらず常に、
「大統領という立場は敬意の対象」という意識があるということの現れかと思います。
Everybody tip your hat, now
皆、さあ帽子をあげて
“tip your hat” は「帽子を少しあげる」という感じ
“take your hat(帽子を脱ぐ)” よりも軽めのあいさつや表敬という感じです
To the man who's got the plan
企みを抱くあの男に
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
Give a hand to the man
あの男に手を貸そう
Let you know he's got the plan
企みがあると教えてくれる
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
Give a hand to the man
あの男に手を貸そう
That you know darn well has got the super plan
知っての通り最高の企みを抱く男に
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
Give a hand to the man that
あの男に手を貸そう
You know damn well's got the super plan
知っての通り最高の企みを抱いている
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
If we had less of him
奴の存在が少しでも小さければ
Don't you know we'd have a better land?
もっと良い国になるってわからないか?
He's Misstra Know-It-All, hey, hey
奴はすべてを知る男
So give a hand to the man
だからあの男に手を貸そう
Although you've given out as much as you can
もう貸せるだけ貸しているけれど
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
ここで言う「手を貸す」や「もう貸せるだけ貸している」は、
好き嫌いにかかわらず徴収されている「国民の税金」を意味しているのでしょう。
Hey, you talk too much
話しすぎだ
You worry me to death, hey
死ぬほど心配させてくれる
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
He's some kind of fella
奴はその種の人間だ
Thinking of only himself
自分のことだけ考えているのさ
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男
Give a hand to the man
あの男に手を貸そう
That you know has got a super plan
知っての通り最高の企みを抱く男
He's Misstra Know-It-All
奴はすべてを知る男